■りそなアフター「妹の辞書に不可能という文字はない」
「大蔵りそな」は、フィリア学院パリ本校において、一目置かれる存在となっていた。
芸術の都と呼ばれるパリで、周囲から認められる努力をし、互いに教え、競いあう友人にも恵まれた彼女は、学年の首席として成績を修めることができた。
また、一家の長としても、癖のある家族をまとめあげるリーダーシップを発揮し、世界有数の富豪「大蔵家」の長女として、相応しい品格を身に付け始めていた。
華やかと呼ばれるだけの道を歩みはじめたりそな。
しかし、そんな彼女が軽々しく口にした
「まあ今後の人生はイージーモードじゃないですかねむふん」
という言葉が兄である「衣遠」の耳に届いてしまう。
彼は妹の怠情を許さず、厳しい試練を科すことに決める。
りそなはパリ校の「首席」として、日本校のコレクションへの参加を命じられ、さらに「大蔵家」の家族集会≪晩餐会≫の仕切りまで任されることになったのだ。
突如人生がハードモードと化したりそなは、頼みの綱の「遊星」に助けを求める。
日本校のライバルや大蔵家の面々が待ち構える中、二人は無事に試練を乗り越えることができるのか?
■メリルアフター「我思う、故に光あり」
フランスの片田舎で孤児として育った「メリル」は、主人公との不思議な縁に導かれた結果、長年生き別れていた家族を見付けることができた。
祖父や従兄妹たちから気に入られ、メリルは一族として歓迎される。
使用人の身から大富豪一家の令嬢へ一変した劇的な運命は「現代のシンデレラ」と持て囃され、パリの上流階級の人々の間にも彼女は受けいれられた。
一度は仲違いした「ブランケット家」との和解も叶い、メリルは実に穏やかな日々を手に入れることができた。
だが一方で、服飾生としては大きな壁に直面する。
ひとに頼ることが苦手で、指示するよりも先に手を動かしてしまうメリルの性格は、集団での制作に向いていないと、教師から宣告を受けてしまう。
また、あらゆる面の能力がずば抜けて高いことも、他の生徒たちから浮いてしまう度合いを深めていく。
思い悩んだ彼女は、すでに社会へ出て活躍している家族たちにアドバイスを求める。
しかしメリルを溺愛する彼らは、彼女をさらなる混乱へ陥れるだけであった。
そんな中、事態を憂慮した「衣遠」は、メリルのパートナーである「遊星」に相談を持ちかけた。
■エッテアナザー+エッテアフター「今日のマルセイユは大変な人出ですこと」
※以下は「エッテアナザー」の内容です。「エッテアフター」は今回のストーリーの続きとなります
フィリア学園パリ本校の冬休み。「プリュエット」は自分の目的を見付けられずにいた。
目指していた演技の道で挫折を覚え、在籍する学院の本分である服飾の面でも立ち位置に悩み、モチベーションを上げられないまま毎日を過ごしていた。
恋愛においても、幼なじみの「メリル」から同性での交際を完全に拒否され、しかも彼女は自分のやりたいことに熱中し、二人の距離は開いていく一方であった。
時間と身体を持て余していたプリュエットだったが、ある日、ひょんなことから「小倉朝日」の正体が「大蔵遊星」であることを知り、本当の性別も打ちあけられる。
素性の公表だけではと思いとどまったものの、プリュエットは「朝日」の通学を認めない。
しかし、一人で授業を受ける「りそな」や、朝日がいなくなったことで落ちこむメリルの様子を見ている内に、その心は動かされ、やがて「朝日」ではなく「遊星」と話をしようと思いたつ。
その遊星、そしてりそなの兄である「衣遠」が、彼らの部屋を訪れたのは、そんな時だった。
衣遠によって引き離されそうになる二人だったが、プリュエットがやってきたことで、からくも虎口を脱する。
しかしそれは一時的な安全であり、進退窮まった遊星は、自ら危険の中へ飛びこむことで、事態の打開を試みる。
彼が講じた策とは、プリュエットを介して、敵対する次男家に仮初めの降状をすることであった。
その依頼に応じ、協力の手を差しのべていく内に、遊星兄妹の置かれている苦境を知ったプリュエットは、やがて二人の力になることを強く願うようになる。果たして彼女たちの運命は―?